ハインリッヒの法則は、
1件の重い災害の裏には、
29件の軽いけがと、
300件のけがの無い事故があるという、
労働災害の経験則です。
数字をとって「1:29:300の法則」
とも呼ばれます。
ただ、厚生労働省の説明では、
この数字は
「同じ人間が起こした330件」の災害を
分けたもの。
大切なのは数字そのものより、
大きな事故の手前には、小さな事故や
ヒヤリとしたことが
たくさん起きているという考え方です。
この記事では、
ハインリッヒの法則の意味、
数字の正しい読み方、
似ている「バードの法則」、
よくある誤解と批判、
仕事での活かし方を順番に紹介します。
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ハインリッヒの法則の意味
ハインリッヒの法則は、アメリカの
損害保険会社の安全技師だった、
ハーバート・ウィリアム・
ハインリッヒ氏が発表した法則。
日本語版のウィキペディアによると、
1929年の論文で初めて示され、
1931年の本『Industrial
Accident Prevention』で広く
知られるようになりました。
厚生労働省の
「職場のあんぜんサイト」では、
次のように説明されています。
- 同じ人間が起こした330件の災害のうち、重い災害が1件あったとすると
- 軽いけが(応急手当だけですむかすり傷)が29回
- けがの無い事故(けがや物の損害のおそれがあったもの)が300回
さらに、300回のけがの無い事故の
後ろには、
何千もの
「不安全な行動」や「不安全な状態」
がある、という指摘も。
ここでいう「重い災害」は、
亡くなる事故や手足を失うような
大事故だけを指すわけではありません。
厚生労働省のページでも、
そう補足されています。

1:29:300の数字の読み方
1:29:300は、三角形(ピラミッド)の
図で表されることが多い数字。
いちばん上の小さな段が重い災害の1、
その下に軽いけがの29、
いちばん下の広い段に
けがの無い事故の300が並びます。
この数字を読む時に、
気をつけたい点が2つ。
- 同じ人が起こした事故の内わけとして説明されていること。「1:29:300」の数字だけが一人歩きしやすいので、この前提ごと覚えておくと読みまちがえにくくなります
- 比率は仕事によって変わること。厚生労働省のページによると、ハインリッヒ氏自身も、この比率は鉄骨を組み立てる仕事と事務の仕事では、おのずと違うと言っています
そのうえで厚生労働省は、
比率の数字そのものではなく、
事故と災害の関係を表す
考え方としては、
今も十分に使えるとしています。
バードの法則とのちがい
ハインリッヒの法則と並んで
よく紹介されるのが、
フランク・バード氏の
「バードの事故比率
(バードの法則)」です。
厚生労働省のページによると、
バード氏は297社の175万件の事故の
報告を調べて、次の比率を出しました。
- 重傷または廃失:1
- けが:10
- 物の損害だけ:30
- けがも物の損害も無い事故:600
ハインリッヒの法則が
3つの段なのに対して、
バードの法則は「物の損害だけ」の段が
入った4つの段。
ただ、厚生労働省は、
どちらの研究でも大切なのは
比率の数字ではないとしています。
災害の後ろにはたくさんの危険の種が
あるので、ヒヤリ・ハットなどの情報を
できるだけつかんで、
早く、的確に手を打つことが
必要だ、ということ。

よくある誤解と、法則への批判
ハインリッヒの法則は
広く知られている分、批判もあります。
元のデータが確かめられない
英語版のウィキペディアによると、
ハインリッヒ氏の元の記録は
失われていて、
数字を確かめ直すことができないそう。
日本語版のウィキペディアでも、
2014年の本『ハインリッヒ再訪』の
著者(Fred A. Manuele氏)が、
1:29:300の比率には根拠がないと
したことが紹介されています。
事故の原因を「人」に寄せすぎている
ハインリッヒ氏は、
事故の88%は人の不安全な行動から
起きると考えました。
これに対して、
W・エドワーズ・デミング氏は、
事故の多くの原因は人ではなく
「管理の仕組みの悪さ」だと
述べています
(英語版のウィキペディア)。
日本でも、法則が働く人の行動の話や
1:29:300の数字の話に
小さくまとめられ、
会社がするべき設備への投資の問題が
置き去りになった、
という批判があります
(日本語版のウィキペディア)。
小さな事故だけを
数えればよいわけではない
英語版のウィキペディアでは、
小さな事故にばかり目を向けた結果、
起きる回数は少ないけれど重大な危険が
見落とされた、と論じた
2010年の報告も紹介されています。
仕事でハインリッヒの法則を活かすには
批判はあっても、
「大きな事故の手前には、
小さなサインがたくさんある」
という考え方は、今も安全の取り組みの
土台になっています。
厚生労働省のページから読み取れる
活かし方は、次のとおりです。
- ヒヤリとしたこと・ハッとしたこと(ヒヤリ・ハット)を、できるだけ集める
- 集めた情報から、事故の後ろにある危険の種(不安全な行動・不安全な状態)を見つける
- 見つけたら、早く、的確に対策をとる
- 比率の数字に当てはめるより、事故と災害のつながりを考える目安として使う
日本語版のウィキペディアによると、
日本では国鉄に、
この法則にちなんだ「330運動」
という取り組みがあったそう。
なお、厚生労働省の
「職場のあんぜんサイト」には、
実際のヒヤリ・ハットの事例集もあり、
自分の職場で似たことが
起きていないかを
見直すのに役立ちます。
まとめ
- ハインリッヒの法則は「1件の重い災害の裏に、29件の軽いけがと、300件のけがの無い事故がある」という経験則
- 数字は同じ人が起こした330件の内わけで、比率は仕事によって変わる
- バードの法則は、297社・175万件の報告から出した1:10:30:600の比率
- 元のデータが確かめられない・原因を人に寄せすぎている、といった批判もある
- 大切なのは数字ではなく、ヒヤリ・ハットを集めて、大きな事故の前に手を打つこと
参考にした情報
- ハインリッヒの法則(1:29:300の法則)(厚生労働省 職場のあんぜんサイト 安全衛生キーワード)
- ハインリッヒの法則(Wikipedia 日本語版)
- Accident triangle(Wikipedia 英語版)
この記事の情報は2026年10月26日に確かめたものです。最新の情報は、上の公式のページなどでご確認ください。

