フラクタルは、自己相似性(ある対象の一部分が、その対象全体と同じような形状や性質を持っていること)を持ち、規模が変化しても同じ形状が繰り返される特徴を持つ図形を指します。
転じて日常やビジネスシーンでは、社会や市場などの大きなコミュニティのパターンを小さな範囲に絞り込んで理解する場合に用いられる概念であったりします。
この記事では、フラクタルの意味や日常やビジネスシーンでどういった使い方をされているのかを解説していきたいと思います。
フラクタルとは?
フラクタルとは、各部が全体と似た構造を持つ複雑な形状のことで
正方形や円、球といった基本的な図形(ユークリッド幾何学図形)とは異なる形を指します。
フラクタルな特性を持つ図形(フラクタル図形)を拡大・縮小すると、大きさに関係なく似たような模様が現れることが見て取れるので、
一見すると不規則な形状の物体を正確に表現することが可能となりました。
例えばこちらの画像
六角形が集まった画像ですが、なんとなく雪の結晶に見えませんか?
このように基本的な図形が複雑かつ規則的に組み合わさることで色々な自然現象が説明できるようになりました。
これらの基本図形を数学的な言葉で説明することで、形同士の関係が縮尺に関係なく保たれることが実証され、
自然界においても様々な倍率で同じようなパターンが存在することがわかってきました。
雲、海岸線、山、木といった大規模な自然現象から、例に挙げた雪の結晶のような小規模なものまで、フラクタルを用いて理解されるものはたくさん存在します。
たとえば木の枝を見てみると、1本の枝が分かれて2本の小さな枝になり
さらにその小さな枝が分かれて、さらに小さい2本の枝が生えているというように
大きな枝と小さな枝が同じような形状をしている事をフラクタルと表現します。
複雑で膨大な情報量を持った自然界の物質をフラクタルという概念で単純化して考え、表現してきたというわけです。
フラクタル構造とは
フラクタル構造は、フランスの数学者ブノワ・マンデルブロが自然界の粒状構造を研究するために初めて提唱した理論です。
具体的な例としては、フラクタル構造の自己相似性を示すコンピュータ画像である
「マンデルブロ集合」
同じ構造のフラクタル図形をより大きくできるように精密に配置した
「シェルピンスキーのギャスケット」
などがあります。
これらの画像は、1種類の構造から大きさや複雑さの異なるさまざまな形状を生み出すことができることを示しています。
日常やビジネスシーンにおけるフラクタルの活用法
フラクタル自体の意味を理解したところで、
この言葉が日常でどのように使われているのかも見ていきましょう。
ここでは、フラクタルの概念を実用化した「フラクタルアンテナ」や「1/fゆらぎ」
についてではなく、日常やビジネスシーンでの言葉の表現として使われる意味を見ていきます。
複雑な社会を構成する一要素
もう一度シェルピンスキーギャスケットを見てみましょう。
三角形がいくつも組み合わさって一つの大きな三角形になっているのがわかるかと思います。
まさに冒頭で説明した「各部が全体と似た構造を持つ複雑な形状」を表している図形ですね。
こうした意味を抽象的に解釈し、日常では
「複雑な社会を構成している似たような一つの要素」という意味合いで「フラクタルな社会」と表現されることがあります。
ビジネスシーンにおけるフラクタルの用例
では、具体的にフラクタルがビジネスシーンでどのように使われているのか見ていきましょう。
フラクタル市場仮説
フラクタル市場仮説とは、株価や為替レートなどの金融市場の価格変動がフラクタル構造を持っているとする仮説です。
この仮説に基づいて、金融商品の価格変動を予測する数学モデルが開発されています。
フラクタル経営
フラクタル経営とは、組織や企業の経営を、フラクタルの概念に基づいて理解し、経営上の課題を解決する手法です。
フラクタル経営では、組織や企業が自己相似的な構造を持ち、小さな部分が大きな全体と同じような特性を持っていると捉えます。
この視点から、組織内の課題を分析し、効果的な改善策を考えることができます。
フラクタルデザイン
フラクタルデザインとは、製品や建築物の設計において、フラクタルの美的特性を活用する手法です。
フラクタル構造を取り入れることで、美しく複雑な形状を実現することができます。
また、フラクタルデザインは、製品や建築物の構造や機能にも応用されており、高い耐久性や効率性を実現することができます。
フラクタルマーケティング
フラクタルマーケティングとは、顧客の購買行動がフラクタル構造を持っていると仮定し、マーケティング戦略を立てる手法です。
フラクタル構造に基づいたマーケティング戦略を実行することで、より多くの顧客を獲得することができます。
例えば、製品やサービスを小さなグループに提供し、そのグループが自己相似的に大きなグループを形成することで、市場全体に進出することができます。
フラクタル分析
フラクタル分析とは、ビジネス分野における様々なデータを、フラクタルの概念に基づいて分析する手法です。
例えば売上データや顧客データなどのビジネスデータを、フラクタル構造を持つものとして捉え、その特性を解析することで、市場や顧客動向をより深く理解することができます。
フラクタル制御
フラクタル制御とは、企業や組織が自己相似的な構造を持っていることを前提に、経営や業務の効率化を図る手法です。
例えば、組織内の小さな部分に対して適切な指示を出すことで、全体の経営や業務の効率を高めることができます。
以上のように、フラクタルの概念は、ビジネスシーンにおいて様々な分野で活用されています。
まとめ
今回はフラクタルについて、その意味や日常・ビジネスでの使い方を解説してきました。
自然界において倍率を上げても同じ構造を持つフラクタルをビジネスで利用する際は
どの倍率までの分析をするのかを決める必要がありそうです。
私たちが知っておかなければならないことの多くは恐ろしく複雑で、どれだけ目を凝らしても理解できない。
「知ってるつもり 無知の化学」 著:スティーブン・スローマン&フィリップ・ファーンバーグ
~中略~
完全な理解を得るために理解しなければならないものの組み合わせはあっという間に増えていき、抱え込もうとすれば爆発してしまうだろう。
知れば知るほど知らないという事を思い知らされる。
知るという行為自体が目的の場合はその状況も楽しめますが、
どこかで正解を出さないといけないビジネスの場合はどこで折り合いをつけるかが重要になってくるかと思います。