私たちが意識、無意識で権威に従うことは、権威への服従心理と呼ばれる行動心理学で説明がされます。なので、権威者や権威に対して従順な態度を取る理由を探ることでより良い人間関係や社会を築くための知見が得られるかもしれません。それでは権威への服従心理について考えを深めていきましょう。
権威への服従心理とは?
権威への服従心理とは権威を持つ人物や団体に対して、無意識的に従順な態度を取ることを指します。
ではなぜ私たちは権威に従うのでしょうか?一つの理由は私たちが自然と権威に対する敬意を抱くようにプログラムされているからです。たとえば子供のころから親や先生といった権威者に対して敬意を持って接するように教えられてきた経験が、私たちの権威への服従心理を形成しているのです。しかし、それだけでは説明がつかないこともあります。
他にも、権威に従うことで得られる利益や、逆に権威に逆らうことによるデメリットが、私たちの権威への服従心理を強化していると考えられます。例えば、上司に従うことで昇進や賞与といった報酬が得られることが期待される一方で、上司に逆らうことで懲戒処分や解雇のリスクが高まることが、私たちが権威に従う理由の一つです。
さらに、権威に従うことで、自分の意思決定に対する責任を回避できるという安心感が働くことも、権威への服従心理の原因となります。権威者が指示したことに従って行動すれば、その結果が良くなかったとしても、自分の責任ではないと考えられるからです。
これらの理由から、権威への服従心理は私たちの行動に大きな影響を与えています。
では、権威への服従心理にはどのような要素が関与しているのでしょうか?
権威への服従心理の要素
権威への服従心理には、いくつかの要素が関与しています。以下では、その主要な要素を3つに分けて解説していきます。
安全性の追求
私たちは自分たちの安全を確保したいという本能を持っています。権威者に従うことで安全性や秩序が維持されると考えるため権威に従う傾向があります。例えば、交通ルールや法律などの社会的なルールに従うことで予期せぬ事故やトラブルを避けることができます。このように権威に従うことで得られる安全性が私たちの権威への服従心理を形成しています。
社会的な認知
私たちは他人から評価されることを求める社会的な動物です。権威者に従うことで周囲からの認知や評価を得られると考えるため権威に従う傾向があります。例えば職場で上司の指示に従い仕事を遂行することで、評価や信頼を得ることが期待できます。このように権威に従うことで得られる社会的な認知が私たちの権威への服従心理を強化しています。
権威への教育や価値観
私たちが育った環境や教育によって権威への服従心理が形成されることもあります。親や教師などの権威者から権威に対する尊敬や従順な態度が教え込まれることが一般的です。また、文化や価値観も権威への服従心理に影響を与えます。例えば、集団主義的な文化では、権威者に従うことが重要視されることが多いです。これらの要素を理解することで、権威への服従心理がどのように私たちの行動に影響しているかがわかります。
権威への服従心理を抑える方法
権威への服従心理を抑えるためには以下のような方法が効果的です。
自己意識の向上
権威への服従心理を抑えるためには自分の価値観や目的を明確にし、自分自身を理解することが大切です。自分がどのような人間でありたいのか、どのような価値観を大切にしたいのかを考えることで権威に盲目的に従うことを避けることができます。自己意識を高めることで自分の意志で行動し、権威への依存を減らすことができます。
権威に疑問を持つ
権威者の意見や行動を鵜呑みにしないで常に疑問を持つことが重要です。権威者も人間であり、必ずしも正しいとは限りません。情報や状況を客観的に分析し自分自身の判断を行いましょう。権威に対する疑問を持つことで、自分の意見や考えを大切にすることができます。
他者とのコミュニケーション
他者とのコミュニケーションを大切にすることで、様々な視点や意見を知ることができます。これにより権威に対する過剰な依存を減らすことができます。異なる意見や考えを持つ人と話すことで、自分の価値観や考えを見直すきっかけになり、権威への服従心理を抑えることができます。以上の方法を実践することで、権威への服従心理を抑え、自分自身の意志で行動することができるようになります。権威への服従心理が私たちの行動に及ぼす影響を理解し、適切な距離感を保ちながら、自分の人生をより良く進めていくことが大切です。
まとめ
権威への服従心理は私たちが権威者や団体に無意識的に従順な態度を取る現象です。安全性の追求や社会的な認知がその原因として挙げられますが、自己意識の向上、権威に疑問を持つこと、他者とのコミュニケーションを通じて権威への服従心理を抑えることができます。