「会議でうまく話せない」「プレゼンが苦手」「頭の中ではわかっているのに、言葉が出てこない」今まで何度この壁に阻まれてきたことかわかりません。
1対1で話をする時はそれなりに伝えられるのに、大勢の前では頭が真っ白になる。そんなことの繰り返しでした。
そして、その原因は自分の「緊張」や「自信のなさ」だと思っていたんです。
でも本質はそこではないのかも、と考えるようになりました。
「これは話す技術の問題ではなく、思考のスタイルの問題かもしれない。」
僕は、内向型で視覚思考タイプ(ビジュアルシンカー)です。
そんな僕が「なぜ人前で話すのが苦手なのか?」を深掘りし、ビジネスコミュニケーションのあり方を考えてみました。
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そもそも「ビジュアルシンカー」とは?
本題の前に「ビジュアルシンカー」って何?の前提から。
ビジュアルシンカーとは、イメージで物事を捉え、考える傾向が強い人のこと。
言語での説明や記憶よりも、図や形、空間、色などの視覚情報を使って思考を進めるのが特徴です。
対義語は「言語思考タイプ(ランゲージシンカー)」と呼ばれているようです。
具体例で考えてみる
誰かに「この料理どうやって作ったの?」と聞かれたときの
ランゲージシンカーと、ビジュアルシンカーの思考の違いは以下のイメージ。
▼ ランゲージシンカーの思考

ランゲージシンカーは、頭の中がすでに言葉で整理されているため、説明もスムーズです。
たとえば
「まず鶏肉に塩を振って5分置いて、次に玉ねぎをスライスします。フライパンに油を引いて中火で炒めて、玉ねぎがしんなりしたら鶏肉を入れて、最後に醤油とみりんを入れて照りが出たら完成です。」
このように、「順序」「時間」「手順」といった言語的な要素で構成されており、相手にも伝わりやすいのです。
すごく羨ましい。
▼ ビジュアルシンカーの思考

一方ビジュアルシンカーの場合、頭の中にあるのは完成した映像や調理中のシーンです。
だから「どうやって作ったの?」と聞かれたとき、いったん頭の中に映像を思い浮かべその映像を言葉に置き換えながら説明します。
映像は鮮明なのに、それを言葉にするために
- どの映像を使えばいいのか
- 映像のどこを切り取ればいいのか
- 切り取った映像をどのような順番に並び替えれば伝わりやすいのか。
といった作業が毎回必要になるので言葉が詰まったり、あいまいになったりしやすいのです。
この違いがビジネスの現場でも影響する
ビジュアルシンカーは全体のイメージや構造を直感的に捉えることを得意としています。
反面、「その考えを説明して」と言われたとき、言語化に莫大なリソースを必要とします。
なので、イメージを言葉に変換するプロセスが必要な分、聞き手から見ると「思考が遅い」ように感じられるのかもしれません。
1on1とプレゼン、なぜこんなに違うのか?
とはいえ、相手と1対1で向き合う1on1ミーティングでは、不思議と話しやすいんです。その理由は何なのだろうと考えると、概ね以下の2つじゃないかなあと思います。
- 相手のリアクションを見ながら頭の中の構成を組み替えられる
- 1on1には会話のラリーがあるので、相手が話している間に思考が整理される
1on1では相手の反応に合わせて説明を足したり、少し黙って考える余白も許される。僕のようなビジュアルシンカーにとっては、思考の全体像を、相手と一緒に少しずつ形にしていける理想的な環境なんです。
ところが、これが複数の前でプレゼンを行うとなると別世界になります。
複数人のミーティングやプレゼンの場では、まず会話のラリーがない。一人が議題を最後まで話し終えるまで周囲の人は黙っていることが多く、その後の質疑応答にも即答力が求められます。
そこでは特に言語能力が必要とされ、話す順序を間違えれば全体の構造が伝わらなくなる。言葉だけで思考を順番に伝えなければならないこの状況に、僕は強い違和感とプレッシャーを感じてきました。
ビジュアルシンカーの思考は「非線形」
ビジュアルシンカーの頭の中は、いわばマインドマップのようなものです。

あるキーワードから放射状に線が伸びて、関連する概念が点在している。重要なテーマは太い線で結ばれていて、補足的な情報は小さな島のように配置されている。私が何かを理解したり、アイデアを整理したりするときは、この地図を空中から俯瞰して見ているような感覚なのです。
でもこの地図には、「ここから話す」「この順番で説明する」といった一本道のルートが存在しません。むしろ、どこからでもアクセスできて、全体を眺めながら行き来できる自由な構造をしています。これが、私にとって自然な“思考のかたち”です。
しかし、話すという行為は違います。
話すとは、一本道の道を順番に歩いていく行為です。しかも、その道の上で立ち止まったり、後戻りしたりすることが、場合によっては「理解していない」と判断されることすらあります。
つまり、私が持っているマインドマップを、リアルタイムで一本道のストーリーに変換しなければならない。それが人前で話すときに感じる苦しさの正体だったのです。
例えば、プレゼンで「なぜこの施策を採用したのか?」と問われたとき、私の頭にはすぐにいくつかの根拠、過去の類似事例、マーケット動向、社内の人的リソース状況、スケジュール面での制約…といった要素が、一気に地図のように浮かび上がってきます。
でも、これを順番に言語化するとなると、
- 論点を選び、
- 過不足なく整理し、
- 相手に伝わる順序で話す
というプロセスを瞬時にこなさなければならない。頭の中にある全体像が崩れてしまわないうちに話し終えなければ…と焦るほど、思考が空転していきます。
ビジュアルシンカーが自分の強みを活かして生きていくために
ビジュアルシンカーにとって、「話す」や「書く」という行為は、自分の思考を一本道に整える作業であり、時にその構造そのものが息苦しさを生みます。ですが、だからといってビジュアル思考が劣っているわけではありません。むしろ、非線形で広がる思考は、創造性や複雑な問題解決において圧倒的な力を発揮します。
たとえば、以下のような場面では、ビジュアルシンカーの強みが最大限に活きてきます
- 戦略立案:要素同士の関係性を一瞬で俯瞰し、複数のシナリオを同時並行で考えられる
- UXデザインや商品開発:感覚やイメージをもとに、直感的にユーザー視点に立てる
- ブレストや企画会議:思考が枝分かれするため、枠にとらわれないアイデアを次々と出せる
- マルチタスク:複数のプロジェクトの進行状況を「地図」として管理できる
「地図」を見せることで伝える
ビジュアルシンカーにとっての課題は、「マインドマップのような思考」をどう他者に伝えるかです。
その答えの一つが、“地図をそのまま見せる”というアプローチ。
たとえば:
- プレゼンや説明資料にマインドマップや図解を取り入れる
- NotionやMiroなど、視覚的に整理できるツールを活用する
- 文章を書く前に、まず図にして全体像を共有する
「言語化」よりも先に「可視化」することで、自分自身も安心でき、相手も構造を把握しやすくなります。一本道に無理やり整えるのではなく、“俯瞰できる構造”で共有することこそが、ビジュアルシンカーにとっての伝える工夫なのです。
強みを「適応」ではなく「武器」に変える
学校や職場では、直線的で論理的な説明が重視されがちですが、それはあくまで一つの形式であり、すべてではありません。
むしろ、世界がますます複雑になり、情報が洪水のようにあふれる現代においては、「全体を俯瞰して、関連性を見抜き、構造を組み替えられる人」が求められています。
ビジュアルシンカーは、まさにその力を持つ人です。
苦手を克服しようとするよりも、得意を伸ばして、それが活きる場所を選ぶこと。
それが、これからの時代をしなやかに生きるための鍵になるのではないでしょうか。
まとめ
大勢の前で話せないことに、長年コンプレックスを抱いてきました。
でも今は、それが単なる欠点ではなく、別のタイプの強みの裏返しであることがわかります。
- 言葉にするのが遅いのは、思考が深いから。
- 話すのが苦手なのは、視覚的に考える力が強いから。
- 即興に弱いのは、丁寧に組み立てたいから。
話すことがすべてではありません。
私たちはもっと、思考のスタイルと表現方法の多様性を尊重する社会を目指してもいいのではないでしょうか。