アフォーダンス理論とは?身の回りの身近な例や悪い例を解説

私たちは日常生活で物事を行う際
「環境や物が持つ意味や価値」に基づいてどのような行動や活動ができるかを判断しており、
その概念はアフォーダンス理論と呼ばれています。

今回はまず、アフォーダンス理論の基礎を解説したうえで
そこからデザインに応用されたシグニファイアに焦点を移し、
身の回りで見かけるシグニファイアの良い例や悪い例を紹介して行こうと思います。

アフォーダンス理論とは?

アフォーダンスとは「物の形や特徴が使い方を示していたり、物の形や特徴から使い方を認識すること」を指し、これによって物の使い方や機能がすぐにわかるようになります。

アフォーダンスの概要

アフォーダンスという言葉は、現在2つの異なる意味で使われています。

ここでは、それぞれの意味について順番に説明したいと思います。

ギブソンのアフォーダンス

まず1つ目は、知覚心理学者ジェームズ・ギブソンが提唱したアフォーダンスという概念です。

ギブソンのアフォーダンスは、環境が提供する機能や可能性を指します。

例えば、人間は様々な物体を「椅子」として利用しますが、ギブソンは環境側にすでに意味があると考え、人間が環境との関係でその意味を見つけ出すと提唱しました。

木の切り株や腰の高さぐらいの柵に腰をかけるように、周囲の環境から「座れそうなもの」を椅子として利用することが、環境側にすでに意味があるというアフォーダンス理論の考え方と一致しますね。

それまでの人がモノに対する考え方は、脳が受け取った情報を解釈してモノに意味を持たせるとされていましたが、アフォーダンス理論では環境側に意味があり、人間が環境との関係でその意味を発見すると主張されています。

アフォーダンスの語源

「アフォーダンス」という言葉の文字の由来は、英語の「affordance」にあり、
「affordance」という言葉自体は、「to afford(提供する、与える)」に由来しています。

つまり、物体や環境が「提供する」、あるいは「与える」ことができる「アクション可能な特性」という意味が込められています。

アフォーダンスは全員に共通するものでは無い

一方で、人間の個人差や文化的背景、経験などによって同じ物体や環境に対して異なるアフォーダンスが感じられることがあります。

特に自然物については明確なアフォーダンスが提供されているわけではないため、人が同じように扱うことが難しくなることもあります。

さらに、文化や経験などの要素によってアフォーダンスが異なる場合があるため、デザインにおいては地域や文化的背景に配慮することが必要とされます。

アフォーダンス理論を適切に適用するためには、人間の認知プロセスや行動原理も理解していくことが必要になりそうです。

アフォーダンスと多様性

アフォーダンスとは物の形や特徴が使い方を示していることで、
アフォーダンス理論に基づいた認識は、地域や文化的背景に配慮することも必要となります。

様々な考えや文化が受け入れられつつある多様性の時代では、ダイバーシティやインクルージョンという考え方に沿った考えが必要になってきそうですね。

ノーマンのアフォーダンス(シグニファイア)

2つ目のアフォーダンスはデザインの分野でよく使われており、ユーザーにどんな行動ができるかを伝えるヒントを示す意味で使われます。

この意味は、アメリカの認知科学者であるドナルド・アーサー・ノーマンによって広められました。

ノーマンはドアの取っ手が「押す/引く」というアフォーダンスを持つことを例に挙げて適用しましたが、これが一部誤解されて広まった結果、「機能を知覚させること」を「アフォーダンスを付与する」という表現が使われるようになりました。

これを避けるため、ノーマンは「シグニファイア」という単語で説明しました。

アフォーダンスは無数に存在する意味そのものであり、知覚できるかどうかは関係がなく、増やしたり減らしたりコントロールできません。

一方、シグニファイヤは人間の身の回りに仕掛けられたサインで、適切な行動を誘導する役割を持ちます。

デザイン側が期待する行動を誘導するために、シグニファイヤを適切にデザインすることが重要です。

具体的には、トイレの入り口にある男性用・女性用のサインや、ゴミ箱の口の形がシグニファイヤの例として挙げられます。

シグニファイアの活用

アフォーダンスから派生したシグニファイアは人間の認知に関する深い洞察が含まれているため、デザインや人間工学の分野で広く活用されています。

例えば自動車の運転席やスマートフォンの操作画面など、人間とのインタラクションが重要な製品においては、シグニファイアを考慮したデザインがよく利用されています。

また、建築や都市計画においても、人間が自然に環境とやりとりすることができるようなデザインが求められます。

シグニファイア理論の身近な例

シグニファイアの身近な良い例としては、スマートフォンのアイコンが挙げられます。

スマートフォンのアイコンは、それぞれのアプリにアクセスするためのショートカットボタンとして利用されています。

例えば、電話アプリのアイコンには、受話器や電話機のアイコンが使われていて
このアイコンを押せば電話がかけられるという情報を受け取ります。

デザインにおいてはシグニファイアを考慮した製品やサービスを提供することでユーザーにとって自然なやりとりができるようになるため、その製品やサービスの価値を高めることができます。

シグニファイアの悪い例

一方で悪い例としては、信号機が挙げられます。

信号機は交通ルールを守るための重要な要素であり、安全を確保するために設置されています。

これがシンプルな横断歩道に設置されている信号機については問題ないのですが、
複数の道路が交差している場合には、どの方向に進めばいいのかわかりにくい場合があることは確かです。

この場合は信号機自体が「正しい方向に進むためのシグニファイア」を提供できていないといえます。

少しわかりづらい信号

また、赤いランプが点灯している場合は止まれを意味することは容易に理解できますが、矢印のランプが点灯している場合には、どの方向に進むべきかがわかりにくい場合があります。

このような場合、信号機が提供する情報だけで判断することが難しくなるため、周囲の状況をよく確認する必要があります。

シグニファイアを考慮したデザインは難しい

しかしながら、シグニファイアを考慮したデザインを行うことは簡単ではありません。

シグニファイアは、製品やサービスのコンテキストや周囲の状況によって異なるため、十分な調査と分析が必要とされます。

また、認知プロセスや行動原理を深く理解することも必要になってきます。

このような洞察に基づいて、製品やサービスに必要な情報を提供し、ユーザーが自然に製品やサービスを扱えるようにすることが、良いユーザーエクスペリエンスを実現するために欠かせない要素となります。

まとめ

以上、今回はアフォーダンスという言葉の説明からシグニファイアの内容まで見てきました。

アフォーダンス理論は、物の形や特徴が使い方を示す言葉で、一方シグニファイアは物の形や特徴から使い方を認識する言葉です。

今回は主にシグニファイアに焦点を当て、身近な例を紹介しながら日常生活においてシグにファイアがどのように働くのかを解説しました。

シグニファイアを理解することで、私たちの生活がより適切なものになることを期待します。